◇【新刊のお知らせ】SB新書から『下流中年 一億総貧困化の行方』という中高年層の貧困化について取りあげた本を出しました。雨宮処凛さん、萱野稔人さんなど6人での共著です(2016年4月6日)

2012年1月5日木曜日

改めて気象サイエンスカフェのこと。災害と科学と社会の狭間でみつけた問いを追いかけて

2012年最初の気象サイエンスカフェ東京は、1月14日(土)に有明の防災テーマパーク「そなエリア」で行います。テーマは鉄道×防災にしました。国の誇る、超巨大防災拠点(本物)を見ることもできますので、ぜひご参加ください。


2012年1月14日(土)第29回気象サイエンスカフェ東京
鉄道と気象の関わり~鉄道会社における防災の取組み~
(申し込みはウェブサイトからお願いします)
http://meteocafe.blogspot.com/2011/12/114.html


以前のエントリにも書きましたが、鉄道発展の歴史は、災害との闘いの歴史でもあります。

リンク:鉄道地図帳でよみがえる過去の地震・津波の影響の大きさ(2011年10月2日)

ところで、私がサイエンスカフェという場で、科学コミュニケーションに挑戦しはじめたのは、2005年のことです。気象の分野にこだわった気象サイエンスカフェをはじめたのは、その翌年でした。

きっかけは、2004年でした。この年は、台風が前代未聞の10個も上陸しました。実感としては、毎週末、嵐がやってきた感じで、防災情報の伝達がうまくいていないことが、たびたび課題として取り上げられました。その頃の私は、CSやCATVの気象キャスターとして「伝える」側にありました。

「警報や避難を呼びかけても、避難しない人がなぜこんなに沢山いるんだろう」

隣接する県や市で災害が起きていたにもかかわらず、1週間も経たないうちにまた同じような被害が出てしまうことが、とても不思議でなりませんでした。

逃げなければいけない人に、誰が情報を伝えるか、危険であるという感覚をどう理解してもらうか、そもそも一人でも伝わりやすいようにするための工夫は、などと考えているうちに、これは科学・技術情報と社会のコミュニケーションの問題だと思い至りました。マスメディアの仕事ではできない、気象予報士の役目を見つけた瞬間でした。

気象サイエンスカフェは、5年以上続いていますが、いまだに「科学技術の専門家と一般参加者の人たちの距離が近づいた」という実感を積み重ねることができずにいます。それでもここまで続けさせていただいたこと、地域カラー豊かな地方展開が図れていることを、関係者の皆さんに感謝しています。

日本の気象界は、学術分野と技術分野の高い専門性のある人たちの多くが、同時に公務員です。このことが、対話や「新しいフラットな関係性」を呼びかけるうえでの、しばりや心理的な難しさとなっていると感じます。

しかしいま、これまでの取り組みを考え直し、場の質を高めていこうと改めて思っています。気象界特有の空気感も理解しつつ、理念も手法も手探りで取り組んでみようと、仲間を少しずつ増やしているところです。

2011年の福島の原発事故をきっかけに、関係者や専門家と言われる人々と、被災者・国民の間に繰り広げられた、まずいリスクコミュニケーションの数々に、

「着眼点は間違ってなかった」
「本気で科学・技術の課題と社会を結びつけるためにできることをしよう」

という思いを強くしました。震災直後に、サンデー毎日(2011年3月17日号)にも、科学技術情報を専門家でなくても理解できるよう伝える動きが今後は必要とされる、といった趣旨のコメントさせていただきましたが、以来、本当にその気運は高まってきたと感じます。

私だけでなく、色んなジャンルで、STS(Science and Technology in Society)に取り組むみなさんも、きっと同じような気持ちでいるのではないでしょうか。

今年は、私も上手に、色んな人たちを巻き込んで行きたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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