撮っているときはほとんど何気なくでしかないのに、後に、ちゃんとした記録だったんだなぁと気づくことがあります。
311東日本大震災で被災したこの松、いまはもうありません。3月24日に、石巻市立門脇小学校の側の西光寺墓地付近で撮影しました。
このとき、すべてが津波になぎ倒された一帯で、焼けて真っ黒な松が、1本だけ空に向かって突き立っていたのを覚えています。学校ごと火災で全焼した付近は、まだ焼け焦げた臭いがきつくただよい、「車から母親の遺体を引き上げに行く」という男性が、焼けた車両で埋め尽くされた校庭に向かって歩いていったのでした。
被災松でつくったコカリナ(笛)を生徒たちが演奏をした、というニュースをみて、あれ? もしかしてあの松のこと? と気がつきました。
河北新報:被災松「コカリナ」復活の音色 石巻・門脇小卒業生ら
…アカマツは同小に隣接する西光寺の墓地内に自生し、樹齢は80年ほどだった。火災で表面の一部は焦げたものの、焼け跡に1本立っていた。…
あのとき、植物の芽吹きなんて感じられないほど焼き尽くされていた、その門脇町から南浜町にかけての一帯も、9月に訪れたときは、津波の爪痕を草がきれいに覆い隠していました。
門脇町5丁目に実家のあった方が、土台だけになった自宅の前で、「ヘドロの上に生える雑草はすごいね、雑草は」とつぶやいました。