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2013年2月21日木曜日

2.22 クライストチャーチ地震から2年 保険と建築許可がいまだに下りない生活者の現状

2年前のあす(2011年2月22日)は、ニュージーランド南島のクライストチャーチ地震(=カンタベリー地震)の日です。マグニチュード(M)6.3の地震が市直下で発生し、185人が亡くなりました。

クライストチャーチのローカルラジオ局Plains FMで番組プロデューサー兼パーソナリティを務める晝間尚子さんのブログを見ていたら、カンタベリーテレビ(CTV)ビルの倒壊災害の検証のファイナルレポートが、昨年末の12月に出ていたことを知りました。



■CTVビル倒壊災害の検証ファイナルレポートに他言語訳


CTVビルは、日本から研修生が多く行っていた語学学校が入居していたところで、日本人28人を含む多数の犠牲者を出した現場です。歴史的建造物でもない建物がなぜあんなにひどく崩れたのか、という全壊ぶりだった様子は当時のニュースでもたびたび語られてきました。

CTVビルの災害の検証を行ったのは、英連邦諸国のなかで重大な出来事があった際に立ち上がる王立委員会(Royal Commission, マーク・クーパー委員長)です。

英語の専門用語だらけのレポートが、私にも読めるかしら? と思いながら見に行ってみて、ちょっと驚きました。だって日本語でもレポートの要旨版(結論のVolume6のみ)が出されていたんです。


翻訳が微妙に違うかもしれないから、公的なレポートはあくまでも英語版という断り書きが付いていますが、それでもすごくきちんとした報告書として読ませていただきました。

他にもタイ語、韓国語、韓国語、中国語でも出されています。ご遺族や当事者からの要望もあったのでしょう。


■CTVビルの事故原因は“事なかれ”の積み重ね


レポートでは、CTVビルの設計が行われた1986年にまで遡り、デザインに関わったエンジニアが複層階の建物を設計したことがなかったことや、エンジニアを雇っていた経営者が市当局にかけた圧力、その圧力に屈して市の建築基準に達していないながら認可を出してしまった市担当者の話しなどが、詳細に書かれています。

その後も、1990年にはコンサルが不適合としていたものの設計図が精査されず、2010年9月4日の地震(M7.0)後の外壁目視検査後にはグリーンのステッカーが貼られ、使用制限を設けられることがなかったそうです。

事なかれだったんですね。安全面を危惧する意見もあったし、不適合とまでコンサルで出されていたのに。

報告書を読みながら感じたのは、1年5ヶ月かけて徹底的に原因を究明したぞというメッセージと、その結果を遺族や当事者にきちんと届けるという強い意思でした。

いま、私自身も取材を続けている石巻市の大川小学校の津波災害の検証委員会のことを思ってしまいます。

検証委はスタートしたばかりですが、初回の会合を傍聴した限り、自己保身的な意見が散見されて、どうなることやらと先行きを案じています。肝心のご遺族の気持ちについては、ダイヤモンド・オンラインで書いています。


■保険も建築許可も下りない…あの日から2年の現地の現状


NZのクライストチャーチ地震の話しに戻りますが、晝間さんに直接お話を聞いたところ、現地のこんな現状を話してしてくれました。

震災から2年が経ったいまも、保険で修繕費用をまかなえない人や、住宅を建てられない人が続出しているというのです。

2010年の9.4地震で損壊を受けた家屋のチェックをしてくれるエンジニアがやってくるまでに1年、調査報告が届くまでに1年といった具合なんだそうです。しかもその報告書がまたずさんだったそうで……。

うーん、それは辛いよなぁ。。

当然9.4地震からわずか5ヶ月後の2.22地震で、さらに大打撃を受けているわけで。

原因は、NZでは住宅保険の中にデフォルトで地震保険が含まれているために、膨大な申請量になったことや、建築の耐震基準の審査を厳しくチェックしているために、大幅な遅延が発生していることだそうです。

「でも、クライストチャーチはNZで一番安全な街になるって前向きに捉えている」

という晝間さんの言葉も印象的でした。クライストチャーチの復興の進捗にも目を向けていきたいと思います。



・晝間尚子さんのブログ
「CHRISTCHURCH最高!&NEWZEALAND生活/旅行情報」
最新のクライストチャーチ事情が詳しく掲載されています。
http://jdunz.com/newzealand/

・王立委員会 最終報告書 第6巻 CTVビルディング第9節:
結論と勧告の要旨日本語訳
http://canterbury.royalcommission.govt.nz/Final-Report-Volume-Six-S.9---Japanese

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